皆さんは体外受精を検討、または経験したことはありますか?
体外受精と一言で言っても、実はたくさんの治療過程がありますよ!
その中の過程のひとつ、それがアシストハッチングAH/AHAです。
実はアシストハッチングは賛否両論で、必須としている病院もあれば、原則行わない病院もあります。
そこで、この記事ではアシストハッチングがどんなものか知って、その治療過程があなたにとって必要かどうかも検証していただけるよう体験者の私が、移植の直前に行われるAH/AHAについて、方法や料金、効果についてお話しします。
体外受精(IVF)の流れ
こちらでちょっとおさらいします。
体外受精と一口に言っても、生理1周期をかけて行う治療ですから様々な過程があります。AHAがどこの過程に入るか簡単に見てみましょう。
①体外受精をしたいと医師に申し出る |
②卵巣刺激【卵巣刺激についての記事はこちら】 |
③採卵【採卵についての記事はこちら】 |
④媒精・受精・細胞分裂【媒精についての記事はこちら】 |
⑤AH AHAアシストハッチング |
⑥移植 |
⑦使われなかった胚の凍結→⑤ |
⑧黄体管理【黄体管理についての記事はこちら】 |
⑨妊娠判定 |
これら一連の流れを「体外受精(IVF)」と言います。
この表にある5番目の「アシストハッチング」をクローズアップしますよ。
アシストハッチングAH/AHAとは
培養士さんに見守られて、採卵から媒精、培養を経て成長した胚ちゃん。
いよいよプレママのおなかに戻ってきます。
「培養士さんお世話になりました。私、旅立ちます!」
そんな胚ちゃんたちの声が聞こえてきそうな培養室ですが、旅立ちの前に、すこしだけお世話を追加します。
胚は子宮に移植後、孵化(ふか)(透明帯から脱出する)して着床します。
この孵化を手伝うことをAH:Assisted hatching 「孵化補助術」と言います。
AHをしてもらった胚はいよいよ移植となります。培養士さんの「いってらっしゃ~い!」という気持ちがこもったひと手間です。
アシストハッチング体験談
私も体外受精でアシストハッチングのお世話になりましたよ。
どんなふうに行われたかも含め、アシストハッチングを詳しく見ていきましょう。
AH/AHAの方法
受精卵は透明帯というタンパクでできた薄い膜に包まれています。
いわゆる、卵の殻に該当する部分が透明帯です。
この殻を抜け出て着床するのですが、抜け出ることをアシストするのがAHです。
AHはレーザーを使用する方法と切開する方法と2種あり、レーザーを用いた方法のことをAHAと呼びます。
レーザーでAHを行っている病院が多いため、AHAという言葉のほうが、ポピュラーですね。
イラストを見ると分かりやすいですね。透明帯を薄くしたり、切開したりして孵化を助けます。
こちらはレーザーでのAH(AHA)の様子
必要な場合とは
本来であれば、体外受精においても、なるべく手を加えないことが理想とされているので、アシストしなくても問題のない胚は、そのまま移植されます。
すべての人がアシストハッチングの対象となるわけではありません。
以下はアシストハッチングの適応例です。
- 透明帯が厚
- 透明帯が変色している
- 透明帯を溶かす酵素が出にくい
- 凍結保存した胚
- 体外受精において不成功が続いている
病院によって解釈はさまざま(初回はAHAは行わない、年齢によってAHA実施をあらかじめ決めているなど)ですが、おおむね、年齢が高い場合、透明帯に問題があることも多いので、AHA実施率も上がります。
実施の報告書
こちらは私(当時41歳)の「体外受精報告書」です。
私の通っていたクリニックでは、AHAは適宜行うというスタイル(終わってからの報告)でしたので、この書類で初めてAHAをしたことが分かりました。「c-IVF(ノーマルな体外受精)で受精卵ができて、初期胚にAHAを施して移植しました」ということがこの文書から分かりますね。
料金
病院によってさまざまですが、私の通っていたクリニックでは、AHAは体外受精治療の中ではオプション扱いで別料金でした。
AHAをするかしないかは、胚の状態に左右されるので、実施後に料金が加算されるシステムです。
あらかじめAHAをすることが決まっていたり、全例に対してAHAを行う方針の病院では、最初から体外受精の基本料金に含まれることもあります。
アシストハッチングの効果
AH/AHAは有効なのかそれとも効果がないのか、実は賛否両論です。
病院によって、アシストハッチングの見解は異なります。
- 「AH/AHAは効果がないから実施しない(手を加えないほうが良い)」
VS
- 「加齢や凍結によって透明帯が固くなるからAH/AHAは全例ですべき」
AH/AHAをしないという立場の見解は「そもそも妊娠できる胚は、アシストしなくてもちゃんと透明帯から出てくるはず」というもの。
AH/AHA推奨派の見解は「加齢や凍結で透明帯は固くなっているし、見た目にも固そうな胚もある」というもの。
まったく真逆に意見が割れています。
なんでこのように意見が割れてちゃうの?
それは……正しい妊娠率のデータが取れないからです。
実際に、全く同じ条件下でAH/AHA実施と非実施を比較することができないので(ひとつとして同じ受精卵がないため)、効果の検証が難しいのです。
また、AH/AHAはあくまでも着床を助ける手段であって、妊娠率には影響を与えないと言われています。
AHA実践結果
私はAHAを施された胚を移植しましたが、結局妊娠には至りませんでした。
でも、実は判定日に調べる血液検査において、微量ながらHCG(着床後に出るホルモン)が検出されているので、もしかしたらちょっとは着床しようと胚ちゃんが頑張って孵化したのかもしれません。
通っているクリニックの方針を知ったうえで、自身にAH/AHAが必要である(孵化に問題がありそう)と感じた場合は、医師に申し出てみるといいですね。
まとめ
体外受精には成功させるためのステップがいくつかあるのがお分かりいただけましたでしょうか。
- AH:Assisted hatching 「孵化補助術」は、移植前の胚に、着床の手助けを行うこと
- レーザーでAHを行うことを「AHA」と呼ぶ
- AH/AHAはオプションとして扱われることが多い
- AH/AHAをするかしないかは、胚の状態による
- AH/AHAの見解は様々で、全例に実施する、適宜行う、実施しない病院がある。
- 孵化に問題があると仮定される場合、AH/AHAの実施を医師と相談する
是非ご自身の治療の検討材料にしてくだいね!
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