私は41歳10か月のときに体外受精を経験したのですが、無事受精した後のことなんてちっとも知りませんでした!
普通の妊娠と同じように、お腹が膨れて出産を待つだけって思っていました。
確かに、妊娠後って赤ちゃんが育つのを待つだけだよね
でも、体外受精は妊娠するまでが、とってもドラマチックなのです!
そんな妊娠の神秘を皆さんに知ってほしくて、この記事では無事受精したあとから、受精卵が細胞分裂をしていき、胚盤胞になるまでをお話しします。
「赤ちゃんの始まり」を共に見ていきましょう!
体外受精(IVF)の流れ
はい!ちょっとおさらいします。
体外受精と一口に言っても、生理1周期をかけて行う治療ですから様々な過程があります。簡単に見てみましょう。
これら一連の流れを「体外受精(IVF)」と言います。
①体外受精をしたいと医師に申し出る |
②卵巣刺激【卵巣刺激についての記事はこちら】 |
③採卵【採卵についての記事はこちら】 |
④媒精・受精・細胞分裂【媒精についての記事はこちら】 |
⑤AH AHA【アシストハッチングにつていの記事はこちら】 |
⑥移植 |
⑦使われなかった胚の凍結→⑤ |
⑧黄体管理【黄体管理についての記事はこちら】 |
⑨妊娠判定 |
こちらでクローズアップするのは4番目にある「細胞分裂」です!【胚盤胞とは】でお伝えします。
体外受精のメリット
体外受精は妊娠するまでが、とってもドラマチックなのです!
体外受精のメリットは自然妊娠では分からないことが分かること、選べないことが選べることです。具体的には……
- 受精卵の細胞分裂の状態が分かる
- 良い状態の受精卵を選べる
- 妊娠率の高い移植方法を選べる
この3点!
外界に出た卵子は受精卵となって胚となって、お母さんのおなかに戻ってきます。
採卵が終わるとほっとしてすべてが終わったような気になっちゃうけど、赤ちゃんにとってはここからが始まりです!
胚盤胞とは
体外受精治療をしていると、よく耳にする「胚盤胞」(はいばんほう)という言葉。
胚盤胞は受精卵が細胞分裂を繰り返し、5日目に到達する状態のことを言います。
こちらのイラストの一番右の状態が胚盤胞です。
体外で育てられる最大限最長が胚盤胞です。
言い換えれば、受精卵は5日目までしか外界で育てられないのですね。
移植の記事で詳しくお話ししますが、胚盤胞の状態で移植すると妊娠率が高くなるので、体外受精においては、胚盤胞まで到達することをひとつの目標とするといいですよ。
受精卵が胚盤胞になるまで
ではでは、受精卵はどうやって胚盤胞になるのか、見てみましょう!
体外受精治療において、採卵手術は実はただの折り返し地点。
まだまだ体外受精治療は続きます。体の外へ出た卵子は、培養士さんによって精子と合わさって受精し、数日間培養されて、また体に戻ってきます。
受精後から数日間、受精卵を育てることを「培養」と言います。
自然妊娠では、このプロセスは卵管から子宮内で行われますが、体外受精の場合は顕微鏡でチェックされながら、培養庫で培養されます。
採卵手後、麻酔でぼーっとしている間も、手術が終わってほっとしている間も、高額な医療費を払ってお財布が痛いな、なんて思っている間にも、培養は進んでいます。
あなたの知らないところで、着々と赤ちゃんになる準備が進んでいるのです。
採卵翌日
受精した卵子には2個の前核が見えます。
細胞分裂が始まりました。
採卵後2日目
4細胞になり、「胚」と呼ばれるようになります。
この状態から40週後には赤ちゃんとして生まれます。すごい神秘ですよね!
採卵後3日目
8細胞になりました。
この状態を「初期胚」または「分割期胚」と言います。
この段階で移植することを「初期胚移植」と言います。
顕微鏡でやっと見える大きさですが、胚にとっては大革命が起きています。
採卵後4日目
桑実胚と呼ばれる胚になります。桑の実みたいなのでそう呼ばれます。
割球同士が緊密に接着していき、まるで一つの細胞のように見えます。
採卵後5日目
画像の5日目をご覧ください!胚盤胞になりました!これが体外で育てられる限界です。
胚盤胞移植の場合はこの段階で移植します。残った胚は凍結されます。
受精卵の異常
画像元:http://www.ivf-baby.or.jp/ivf//mediagallery/slideshow.php?aid=1&f=1&sort=5
多精子受精は培養を中止することがあり、残念ながら受精の段階で異常事態が起こることがあります。
異常な受精が起こった場合はいずれ成長が止まってしまうので、培養を中止します。
異常受精は5%の確率で起こります。
本来、卵子は1個の精子しか受け入れません。
1つ精子が入った時点で、他の精子をバリアする機能を持っています。しかしながらこのバリアが働かず精子が2個以上入ってしまう卵子もあり、これを多精子受精と呼びます。
通常だと2個の前核が3個見えます。
このような受精卵はのちに成長が止まってしまうので、培養を中止します。
受精卵が胚盤胞に育つ確率
受精卵の強さによって結果は大きく左右されます。正常に受精し、細胞分裂を始めたとしても、途中で成長が止まってしまうこともあります。
ではでは、胚盤胞になれる受精卵はどのくらいあるのでしょうか?
私のクリニックでは、良好な胚盤胞になるのは10%程度とのことでした。(年齢によって異なるが、平均して10%)つまり、10個採卵できたら、そのうち1つが良好な胚盤胞になれるということです。
採卵後の受精率は70~80%ですので、受精自体はかなりの高確率でするものの、その後の細胞分裂が高いハードルであることが分かります。
- ミズガメの結果
「凍結胚数:1個」というのが胚盤胞のことです。胚盤胞まで行くのはなかなか狭き門です。
年齢別の胚盤胞ができる確率
少し違った角度から、胚盤胞の確率を見てみましょう。
こちらの図は胚盤胞まで至ることができる人の確率です。
何個できたかではなく、体外受精実施者のうち、どの程度の人が1つ以上の胚盤胞を獲得できたか、という数値です。
40歳前では、体外受精を経験した人はかなり高い確率で胚盤胞まで達します。
30代までの人は、獲得できる胚の個数は人それぞれですが、胚盤胞に達する人がほとんどであるといえます。それに対し、40代では体外受精をしてみたものの、胚盤胞がひとつもできないという人が6割以上となります。本当に年齢ってシビアですね。
私の場合は胚盤胞まで待たず、初期胚移植でした。
年齢が高い場合、胚盤胞に至らず移植できない可能性もあるので、妊娠率が多少下がっても、2,3日目の状態である初期胚を使うという選択になります。
胚盤胞を目指す意味
体外受精を試みる中で、胚盤胞にこだわるべき理由はこちらです。
- 胚盤胞が複数できた場合は、凍結することができる
- 初期胚<胚盤胞<凍結胚 の順に妊娠率が高くなる
この2点が胚盤胞の強みです。
採卵数、受精卵数にもよりますが、ひとまずは胚盤胞を目指す、と覚えておくとよいですよ。
まとめ
自然妊娠では知りえない、受精の神秘をお伝えしました。ご自身に適した妊活につながりますよ。
- 受精した卵子は、数日後には胚と呼ばれる状態になる
- 途中で成長をとめてしまう受精卵(胚)も多い
- 良好な胚盤胞になれるのは10%程度
- 40歳以上になると、胚盤胞に達する人の割合がぐっと下がる
- 採卵周期で移植されずに残った胚は凍結される
- 初期胚<胚盤胞<凍結胚の順に妊娠率が高くなる
年齢別の胚盤胞到達率からも分かるように、40歳以上では、胚盤胞まで待てない(待っていたら、成長が止まってしまう可能性が高い)ことも多いので、まずは初期胚移植をすすめられることがほとんどです。
たしかにそのほうが妊娠への道が開けますよね。胚がなければ移植できませんから。
自身の採卵数によって治療方法が臨機応変に選べるように、胚盤胞になる確率をよく知っておきましょう!
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